カウンター Love song of last winter〜ひと夏の思い出〜 前篇

Love song of last winter 〜ひと夏の思い出〜 前篇

 

夏――

突然だが僕はなんだかんだでこの季節が嫌いなのか?

よく分からない、でもこれだけは言える・・・・セミ、うるせぇぇぇぇぇ!!

夏休みに入って一週間ほどが過ぎた、この季節になるとセミも調子にのって徐々に大声で朝早くから泣き始めてくる。

そして僕は今日、朝、セミの声で起こされるという蒸し暑い一日の始め方をしてしまった。

そして今は着替えなどをすまして朝から優雅にクーラーの効いた部屋で少し遅い朝食をとっている。

 

「ふぅ、クーラーはいいねぇ。まさに人類が生んだ文明の極みだよ」

 

などと訳の分からないことを言っているうちに朝食は全て平らげてしまっていた。

夏休みに入ってこの一週間だらだらと過ごしてきたがそろそろ宿題をやり始めた方がいいだろう。

よく言われている言葉だが、僕にとって夏休みの友は""ではない、提出日までに必ず撃破しなければならない""である。

しかも今年のは結構強そうなんだ、これが…。

そう思って机に向かったその時ベットの上に置いていた携帯が鳴り響いた。

 

pipipipipipipipipipipi

 

「はい、もしも――」

『連?暇〜?だよね〜そうだと思たわぁ〜、良かった〜』

「あ、彩華?どうしたの?急に?」

『夏休みやで、連!!夏休み!!どこか遊びに行こっ!!』

 

突然の電話の主は彩華だった。

夏休みに入ってからは寝る前2,3通メールのやり取りをする位になっていたのだが…。

それでなくても彩華が電話をかけてくるのは珍しい。

それに何故かテンションも高い、彩華って基本的に夏は苦手じゃなかったかな?

 

「ねぇ?彩華?なんかテンション高くないかい?」

『そうかな?それよりな、うちさっ、連の家の近くまできてるんやけど?』

「なんだって?ほんと?」

『うん♪ほら、何時もの公園のベンチのとこ〜、今から連の家迎えに行こうか?』

 

そう言われて急いで窓から公園を眺めると・・・・・あっ、いた。

何人かの人ごみにまぎれているが、何時ものベンチで携帯電話らしきものを耳に当てている少女が見える。

それもこちらを向いて手まで振ってくれている。

 

『連〜?見つけられた?うち目立ったやろ〜』

 

えぇ、そりゃもう…。

 

「うん、目立ってたよ、ちゃんと見つけた」

『さすがは連やな〜、じゃ、今から行くし待っててなぁ』

 

ぴっ!つー、つー、つー、つー、つー、つー

 

そう言うと彩華は一方的に電話を切ってこちらに走り出していた。

って出かけるとか言ってなかった?!彩華。

マジですか…。この暑い中・・・・。

でも、ここまで来てもらって帰すわけにはいかないし…、家に上げる・・・・。

迅速に拒否権発動、部屋が見せられる状態じゃない、片づいてないのも原因だけど、まぁ男の子にはそれ以外も色々あるもんだ…。

ってことでお出かけ決定!

そう判断した俺の頭は彩華がさすがにはないと思うが部屋にまで来るようなことがないように急いで部屋着から着替える。

 

ぴんぽーん

 

家のベルがなる、彩華だ。

僕は急いで着替え終えると、あわてながら階段を駆け下りた。

 

「あら?彩華ちゃん、久しぶりねぇ」

「はい、しばらくです、おばさま」

 

こんな会話で玄関では彩華と母さんが既に接触しているはずだ。

 

「ごめんね、連今用意してるから、連の部屋で待ってる??」

「ぇえ、良いんですかっっっ!?」

「そりゃもう、大歓迎よ。こちらとしてはね」

「それじゃあ上がらせていただきます♪」

 

そしてきっとこんな話が展開されているのであろう。

ヤバィ、母さん勝手にあげないで――

前述した通り部屋なんかにあげられたらたまったものじゃない。

僕は急いで階段を駆け降りる。

 

―――いたっっ!!

玄関では彩華と母さんが接触済み。

 

「ごめんね、連今用意してるから、連の部屋で待ってる??」

「ぇえ、良いんですかっっっ!?」

 

うわぁ、なんて予想通り・・・

ということはこのあとはやはり…

 

「そりゃもう、大歓迎よ。こちらとしてはね」

「それじゃあ上がらせていただ―――」

 

「待ったぁぁぁぁ!!」

 

二人の会話に終止符を打とうと大声をあげる。

 

――が予想に反してその必要は無かった。

 

「きたいのですが、今日は二人で出かける約束なので…、上がると長居しちゃいそうですから、またの別の日に…」

「あらそう?それは残念ね」

 

「ってぇ!?あれぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

僕の予想を裏切る彩華の回答に僕は足を絡ませて階段から落ちてしまった。

 

「れ、連?大丈夫!?」

「うん、なんとか・・・」

 

そう言って差し出された彩華の手を取り立ち上がる。

ってて、少し背骨が・・・・

 

「いこっか?」

 

そう言うと彩華はそのまま僕の手を引っ張って玄関から走り出した…。

 

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