そう言うとアリスさんはにっこり笑って自分もご飯を食べ始めた。

食事が終わった後、アリスさんはまた出かけて行った。
出かける前に「ゆっくりしておいてね」と言われていたが、
やはりゆっくりするなんて自分の性分には合わない。
今一番やりたい事は、この近辺の探索だった。
家の前には草原が広がっていたが、家の裏にはまだ行っていない。
もしかしたら、何か面白いものを見つけられるかもしれないのだ。
だから、当然行った。
そして見えたのは……3つのものだけだった。
1つ目は山。
高い山で、普通に山の頂上が見えない。
周りの雲が多すぎるのだ。
2つ目は町。
規模はそれなりに大きくて、町の出口らしき所からは小さいながらも街道があった。
街道は山を迂回しているみたいで、先を見ることは出来ない。
3つ目は──森。
多分、私が倒れていた森だろう。
木が生い茂っていて、森の様子自体はほとんど分からない。
……気になる。
森の中で倒れたはずなのに、森の入口にいたなんてはずがない。
ここから森まで、そんなに遠い距離ではない。
(危なくなったら、逃げればいいよね……)
足はゆっくりと、森の方へと向かっていった。

森にはすぐついた。
森は不気味なほど静かで、鳥のさえずりさえ聞こえない。
いざ森の奧に入ろうとした時、看板が立っているのが目に止まった。
そこには「危険、これより奧には入るな」と書いてある。
普通なら、看板に従って帰るのだろう。
だが、無視をして奧へと入っていった。
この森の秘密を知りたかったのだ。

森に入って少しすると、何だか嫌な感じがしてきた。
何かにジッと見つめられているような、そういう感じである。
そろそろ引き返すべきなのだろうか……。
命あっての物種だ。調べに来ること自体は、また今度でも出来る。
そう思って来た道を戻ろうとした時、1匹の大蛇が道を塞いだ。
大蛇の大きさは人間を丸飲み出来るほどだ。
明らかに狙われていた。
怖い。身体が思うように動かない。
蛇に睨まれた蛙とはこういう感じなのだろうか……。
大蛇が動いた。大口を開けて、飛びかかってくる。
口の中に見えた牙は、毒か何かで鈍い光を放っていた。
様々な思いが胸を過ぎる。
あれに噛まれたら死ぬのかな、森なんて来なきゃよかった、まだアリスさんにちゃんとお礼言ってなかったな、等々……。
そして、大蛇の口が目前に迫り──大蛇は吹っ飛んで、木に叩きつけられた。
死んだわけではなさそうだが、もう動きそうにもない。
(何で助かったんだろう……?)そう思うと同時に、近くの木の影から男が姿を見せた。
男はあのチーターのような生物の背中に乗っている。
「チッ……」
男が突然舌打ちをした。
「ったく、何でまたこの森に入ったんだよ……せっかく昨日、森の中で倒れてたのをわざわざ森の入口まで運んだってのに……」
……なるほど。これで合点がいく。
つまりは、男のペット(?)が私を見つけて、見失わないようにわざわざついてきてくれていたのだ。
とりあえず、お礼を言おう。危ないところを助けてくれたんだから。
「あの……危ないところをありがとうございました。あ、私は晴菜と言います」
「俺はネレウス。この森は危ない。ロイトスに乗せていってやるから、時が来るまではアリスの家でおとなしくしていることだな」