そう言うと、女の人は部屋を出て行った・・・・・・。

いつの間にか、寝ていたようだ。
ベッドの上で重たいまぶたをゆっくりと開ける。
身体はもう平気だ。疲れもある程度とれている。
こういう時にベッドの上でゆっくりしていられるような性格ではない。
そのことは、自分が一番よく分かっていた。
とりあえず動きたいし、外の空気も吸いたい。
だから、教えられたとおり、部屋を出て右に向かってまっすぐ行った。
扉を開ければ、眩しい光が家の中に差し込んでくる。
もう朝になっていた。周りを見れば、緑ばかりが見える。
家は、草原の中にあった。
(ここ、本当にどこなのかな……)
「晴菜、ここにいたのね」
呼ばれて振り返ると、さっきの女の人が家の入口に立っていた。
「やっぱり出て行くの?どっちでもいいんだけど、せめて出て行く前にご飯くらいは食べない?お腹空いてるでしょ?」
「あ……いえ、外の空気を吸いたいなと思って……」
突然、女の人が寂しそうに笑った。
何か変なことを言ってしまっただろうか?
「そうね。ここら辺の空気はまだ綺麗だから……」
……まだ?
どういう事だろう?
ここは車の一台もないから綺麗、という意味?
だけど、ここは地球ではない、ということはもう分かっている。
地球じゃないのに、地球と同じ技術があるのだろうか?
……いや、案外あるのかもしれない。
考えてみれば、この家も至って普通の家だ。
違う世界では、全く違う生活をしているという発想自体を取り除かないといけない。
まぁ見たこともない動物はいたけど……。
「とりあえず、家に入って。ちょっとしたものだけど、もうご飯出来てるから」
言って、女の人は家に入っていった。
私も、少しして家の中に戻った。
ご飯を用意してある部屋は、すぐに分かった。
とても良い匂いがしたからだ。
部屋のドアを開けて、部屋の中心にある机の上の料理を見る。
どれも見たことの無い料理ばかりだったが、お腹が空いているからどれもおいしそうに見えた。
「シンプルな料理しか作れないんだけどね……さ、晴菜、食べてみて?」
「はい……あの、名前を教えて貰っていいですか?」