「・・・少ししたらすぐ出かけるぞ」
「はいはい、わかってますよ」

いや……まぁ確かに少ししたらすぐ出かけるって言ったけどさ……。
だからって、10分も経たないうちに出て行くのはどうかと思うわけよ。
もうね、呆れた通り越してほんの少し尊敬しちゃった。
普通はもうちょっと長くいるもんでしょ。
大体夕食もまだ出来てないってのに……。
なんてことを考えながら、私は今、夕食の手伝いをしている。
「そういえば晴菜、リートス辺りから来たって本当?」
不意にアリスさんが話しかけてきた。
「……リートス?」
どこですか?
ええ、全くもって知りませんとも。
「あら?ネレウスの話だと晴菜が自分でそう言ったって……」
そんなこと言ったっけ……?
あ、そっか。
あまりにわけが分からなかったから、適当に答えたんだった……。
「あ〜……えーと……はい」
「なんだか間があるけど……まぁいいわ。それじゃ、リートスへ行く?あなたがここに来た理由が分かるかもしれない」
「じゃあ……行きます。ここでずっとお世話になるわけにもいかないですし」
最後に付け加えた言葉に、アリスさんが苦笑した。
「別にそんなことは気にしなくていいのに……でも偉い。そういう子、好きよ?」
「でも私、道が分からないんですけど……地図はあまり役に立たないって今日分かったし」
「それは気にしないで。私も行くから」
……へ?
アリスさん、なんだか凄いことをさらっと笑顔で言いませんでしたか?
……気のせいよね。うん。
そこまでしてくれるわけが……。
「なんて顔してるの?私も行くわよ。リートスには一度行ってみたかったのよね。晴菜は魔を扱える?」
「魔……ってなんですか?」
知らない単語に首をかしげる私。
アリスさんは「やっぱりね」と一人頷き
「じゃあ扱えないっぽいから、空間移動は無理ね。ってわけで徒歩決定。
あ、言っておくけどかなり長い道のりよ。覚悟しといてね。あ……そっちはもう終わった?じゃあこっちの盛りつけお願い」
「あ、はい」
なんだかアリスさんは勝手に話を進めているみたいだし、よく分からないから全部任せちゃおう……。
ピンク色の野菜っぽいものをお皿に盛りつけながら、私はそんな他力本願な結論を出していた。
「いつ行くんですか?」
「ん?そうね……準備も必要だし、ネレウスも安全のため連れて行きたいから……明日ね。
準備はすぐなんだけど、ネレウスに仕事休ませるのに時間かかりそうだし」