「チッ……お前な、危険だから霧が出たらすぐに引き返せって書いてあるだろうが。ほら、ここ」

言って、ネレウスは地図の一角を指さした。注意書きっぽい所だ。
なるほど……そういうことが書いてあったのね。

「でも私、字が読めないんだもん、しょうがないじゃない」
「字が読めない・・・・」

ネレウスは私を呆れていてそれでもって驚いたような表情で眺めていた。

「お前・・・・・馬鹿?」

なっ、馬鹿・・・。
久しぶりに言われたかもしれない。
向こうでも結構言われたけど最近は聞いてなかったから"馬鹿"というフレーズに頭がカチンと来た。

「なっ、人のことそう簡単にバカって言うんじゃないわよっ!!」
「だって字が読めないんだろ?」
「それがどうしたってのよ、さっきのあんたの間抜けた顔の方がよっぽどバカよっっ」
「まぁ、そんなことどうだって良い、お前本当に字が読めないのか??」
「そうよっ!!悪い?ここに来たばかりなんだからしょうがないじゃない」
「お前何処から来たんだ??そういやなんであの森に居た??」
「何処からって言われても・・・、とっ、遠い所。そうここから物凄く遠い所よきっと!!」
「・・・・きっと??遠いってことは・・・リートス辺りからきたのか??」
「リートス??あぁその辺じゃない??きっと。それより私見ての通り字が読めないから何を買っていいか読めないのよ、だからついてきて?」
「なんでガキの手伝いを・・・俺はまだ仕事があるってんだ・・・」
「ついて来てよ、ね?・・・あっロイトス来てくれるの?優しぃ〜」

そう言うとネレウスの隣で直立不動だったロイトスを引っ張り街の方角に歩いて行った。


街は何処もレンガで作った建物であえて例を上げるなら・・・・・イタリア?
まぁとにかくヨーロッパらへんの国みたいな感じの街がそのまま近代化したような感じでかなり文明は発達していた。
これじゃあたぶん識字率も100%だよね・・・。
どうりで字が読めないとおかしいわけだ・・・。

あっ買い物はちゃんとしたわよ。
結局ネレウスもついて来たし、市場でいろいろ見て回れて結構楽しかった。

「はいっ、お家に到着〜」
「ここまで来たらもうトラブルに巻き込まれねぇな」

うっ、さりげなく(?)嫌味なの?
こんな玄関の前じゃ後はドアを開けて入るだけなんだから何もあるわけないじゃない。
完全にバカにされてるわね。

「じゃあ、アリスによろしくな、よしロイトス行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってよ」
「なんだ?まだなんかあんのか?」
「少し寄ってきなよ、ここ自分の家でしょ?たまには顔を見せたらどうなの?アリスさんきっと寂しいよ?」

「そうよ、家の前まで来たんだから少しぐらい入っていったら?」

「うわぁぁ、アリスさん」

いつの間にかアリスさんが家の中から出てきて後ろに立っていた。
あ〜びっくりした、久しぶりに心臓止まるかと思っちゃった。

「アリスさん、何時から居たんですか?」
「ついさっきよ?街はどうだった晴菜?」
「はい、楽しかったです、色々見て回れたし良かったです」
「それは良かったわね、おなか減ったでしょ?すぐ作るわ、さっ入って」
「私もお手伝いしますね、荷物運んでおきますね」
「ありがとう、晴菜。ほらネレウスも入ったら?」

「・・・少ししたらすぐ出かけるぞ」
「はいはい、わかってますよ」